2015/08/30

[論文メモ] Himka, John-Paul. “Young Radicals and Independent Statehood: The Idea of a Ukrainian Nation-State, 1890-1895,” in Slavic Review 41-2, 1982


Himka, John-Paul. “Young Radicals and Independent Statehood: The Idea of a Ukrainian Nation-State, 1890-1895,” in Slavic Review 41-2, 1982

1890年代前半のルテニア・ラディカル党における世代間論争について。ドラホマノフの影響を受け、連邦制のなかでのウクライナを目指すFranko,Pavlykら「老年」ラディカルに対し、マルクス主義の影響を強く受けたBudzynovs'kyi, Bachyns'kyiら「青年」ラディカルは独立国家としてのウクライナを政治的目標とした。彼らは、ドラホマノフが唱えたアナーキズムを主調とする社会主義は時代遅れだと見なし、ウクライナ人の生き残りと発展のためには政治的独立、そして自立した社会機構が不可欠だと論じた。

青年ラディカルは初めて自治を超えて独立ウクライナを唱えたため、民族史観では純粋なウクライナ・ナショナリストとして描かれがちである。しかし、Himkaは独立国家案が旧来のドラホマノフ主義に対するマルクス主義からの反発として生じたものであることを示した。また、「民族発展の基盤として国家が必要」という主張は、ナショナリズムの段階的な発展(文化的覚醒→大衆動員→政治的要求)を想定する議論とは真逆の論理であり、ウクライナ以外のネイションとの比較の可能性も感じさせる。

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