2015/08/30

[論文メモ] Zayarnyuk, Andriy. “On the possibility of peasant intellectuals: the case of the Ukrainians in Habsburg Galicia,” in Social History 39-1, 2014


Zayarnyuk, Andriy. “On the possibility of peasant intellectuals: the case of the Ukrainians in Habsburg Galicia,” in Social History 39-1, 2014

ナショナリズム論の主流をなす近代主義、構築主義においては、インテリに非常に重要な役割が与えられている。とりわけ、ウクライナを含む東欧のネイションビルディングについて論じる歴史家は、常にインテリに注目し、彼らを目覚めつつあるネイションの先導者と見なしてきた。一方、当時は人口の大半を成していた農民は、農奴解放後の社会で「伝統的」存在として描かれ、「近代的」な都市の知識人と対置されている。そこで、そのような農民像の批判的検討を目指し、著者は「農民インテリは可能か?」という問いを提示し、ガリツィアにおける「啓蒙された」農民の活動を辿り、彼らが実際はグラムシの「有機的知識人」に相当するような存在であったことを示した。

重要なのは、著者の言う「農民インテリ」が単なる都市のインテリ層の地方における代弁者であったわけではなく、農民としての自意識を持ちながら知的活動に従事していたという点である。さらに、ナショナリズム論の伝統的な農民像への反駁としては、その活動がルテニア・ネイション全体の規模に及んでいたことが重要である。オーストリア=ハンガリーにおいてはあらゆる政治はネイションが舞台となり、農民インテリはそのネイションを(実践的には新聞や雑誌、読書会などを)、農民全体の利害形成の場として利用した。やがて、ネイション・レヴェルの農民インテリの交流は、農民政党を自認するラディカル党の誕生をもたらした。

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