2021/03/21

ウィーン生活6:入国から一か月

  2月21日にウィーン空港に到着してから1か月が経った。到着時からオーストリアの防疫措置に大きな変化はない。商店や博物館はマスク+人数制限措置の上で開いているが、劇場や映画館は閉まったままで、レストランやカフェの店内営業は、テラス席を含め禁じられている。また、ショッピングモール等の公共施設も屋内での飲食を禁じており、外出時には寒い公園のベンチでテイクアウトした昼食をとるしか手段がない。この一か月、ほとんど出かける気にならなかったのはこの昼食の問題が大きい。また、後半の二週間は基本的に寒く、一日のどこかで雪が降る変な天気が続いた。

 もう六年前のことだが、交換留学生として一年間ミュンヘンで暮らしたことがあるので、生活への適応についてあまり不安は持っていなかった。しかし、三年間の長期生活である、妻との二人暮らしである、あれから歳をとった、などの理由で、思ったより苦労した一か月となった。

・買い物

 家具が一通りそろった学生寮に住み、それほど研究に打ち込む必要もなかった前回の留学とは違い、今回は自分で机、椅子、プリンター、モニターなどを買いそろえて研究環境を整える必要があった。また、最低限の食器はあったものの、フライパンやキッチン雑貨なども買い足した。生活に必要な買い物を終えた心境としては、やはりIKEAに頼らざるを得ず、Amazon.deも何はともあれ便利ということである。隔離開けすぐにIKEAの実店舗に行ったときにはそれほど安く思えず最低限の買い物に抑えたが、そのあといろいろな店を回った際、あのとき買っておけばよかったと思うことが多かった。それでもネットでほとんどの商品が買える上に、IKEAの通販は2―3日後に商品が届くのでオーストリア基準ではきわめて優秀である。Amazonも、別に安い商品が集まっているわけでもなく、送料無料にするには€29以上の買い物が必要という縛りがあり、日本のように翌日に届くことはほぼないが、それでも街でそれぞれの専門店を回って買いそろえるよりは楽である。IKEAとの比較で無印良品とニトリが恋しいという話はよく出るが、個人的にはあらゆるメーカーのあらゆるジャンルのものが買える店、東急ハンズやドンキホーテのありがたみを感じた(もっとも、日本ではほとんど使わないのだが)。

 一応、現地の家具屋であるXXXLutz(とグループのMöbelix)、Leinerなども一通り覗き、椅子はLeinerのネットショップで買った。プリンターはオフィス用品店のPAGRO DISKONTで買った。100均的な店としてはTEDIがあり、風呂用のサンダルなどを買ったが、ドイツの会社であるためドイツより販売価格が50セントほど高いのに腹が立った。

・食事

 外で食事ができないので、ほとんど自炊をしている。食材は専門店で買うべきだという価値観を持っているが、店員とのコミュニケーションを避けたいので、結局スーパーマーケットですべてを買うことになる。

 最寄りのスーパーはMERKURである。大型店舗で知られるチェーンスーパーだが、品揃えに偏りがある印象がある。加工肉やワインがやたらと充実しているが、野菜の種類はそれほど多くなく(しかも新鮮に見えない)、ライ麦の入っていないパン(Brot)を一つも置いていない。また、米は1kgサイズでしか売っていない。しかし、先日MERKURが同グループのBILLAブランドに統合され、BILLA Plusと名前を変えると知り、急に愛着がわいてきた。

 オーストリアはスーパーマーケットの多様性が低い。そもそも格安スーパーのPenny, Lidl, Hofer(ドイツ名Aldi)はドイツ発であり、ロゴに元々なじみがある。残るはBILLA、SPAR、MERKURであるが、そのMERKURはBILLAの傘下であり(しかももうすぐ消える)、そのBILLAもケルンのスーパーREWEの傘下である。結局、認識が間違っていなければ、フランチャイズのSPARが唯一のオーストリア発スーパーマーケットチェーンということになる。

 ただし、ウィーンは多文化都市であるので、中心部を出ると世界各地の食材を扱うスーパーマーケットが点在している。とりわけ便利なのはトルコ系スーパーで、家の近くにもあるETSANは、上述したチェーン店に匹敵する数をウィーン市内に展開しているように見える。スパイス、米、羊肉を買うのはここである。ナシュマルクト周辺には中国系スーパーが数店舗あり、その近くに日本食品店もある。トラムからはロシア食品店、ルーマニア食品店も見える。

 概して食材は安くはなく、六年経ったこともあるが、ドイツよりも高いように感じる。特に、肉、チーズ、パンが思っていたより高い。じゃがいも、パスタはさすがに安い。日本と比較してバスマティ米とアイスランド風ヨーグルトが安く手に入るのが地味にうれしい。


 現在の防疫措置の期限は3月26日だが、明日の3月22日にその後の措置が発表される。飲食店のテラス席再開が許可されるのか、その場合の条件が何かが最大の注目点である。ホテルの観光目的の営業許可も待ち遠しいが、それはまだ期待できないだろう。

2021/03/16

ウィーン生活5:Volksoper~Türkenschanzpark

 先日の土曜日(3月13日)、Volksoperから西に向かってちょっとした散歩をした。何度か大学や買い物に出かけたついでに市の中心部を歩くことはあったが、何の目的もなく外出するのはおそらくウィーンに来て初めてである。

 まず、環状道路ギュルテルGürtel沿いに走るU6のヴェーリンガー通りWähringer Straße駅で下車。この駅は1898年、都市鉄道の他の駅と同様、オットー・ワーグナーの設計で建設された。すぐ目の前にVolksoperがある。当然コロナにより公演は中断しており周囲は閑散としている。「大衆劇場」の名の通り、リンクの国立歌劇場とはやや異なる演目を上演しており、オペレッタやミュージカル等で有名であるようだ。建築はFranz Krauß, Alexander Graf(1898年)。フランツ=ヨーゼフ帝即位50周年に建てられた。

Währinger Straße駅


Volksoper

 ヴェーリンガー通りを西に進むと、Kutschkermarktという市場と交わる。この市場は、ウィーンではもはや数少ない路上市場で、クチカー通りの南北数百メートルに野菜、チーズ、肉などを売る露店が連なっている。いわゆるヨーロッパの市場という感じの品ぞろえで、基本的にどの店もBioを謳っている。市場の南側のファーマーズマーケットは金曜日と土曜日のみ開催。

Kutschkermarkt

 市場でケバブを買い、さらに西のヴェーリンガー・シューベルト公園Währinger Schubertparkのベンチで食べる。この公園はもともと墓地であり、かつてはベートーベンとシューベルトもここに眠っていた(のちに中央墓地に移された)。公園になったのは1925年のことである。今ではなんの変哲もない静かな公園だが、ベートーベンとシューベルトがここにいたことを記念するモニュメントは残されている。

ベートーベン・シューベルト記念碑

 その後、静かな住宅街を抜け北に曲がり、土曜日で閉まっていたウィーン大学天文台の脇を通り、テュルケンシャンツ(トルコ陣)公園Türkenschanzparkに至る。この公園がある場所に、1683年の第二次ウィーン包囲の際、オスマン帝国軍が陣営を張っていた。1888年に公園が開かれた際にはフランツ=ヨーゼフ帝がやってきて演説を行った。この演説の内容は展望塔Paulinenwarteの壁に刻まれている。広大な公園の中で最も興味深かったのが、コサック記念碑である。これは2003年、オーストリアのウクライナ人コミュニティのイニシアチヴで建てられたもので、コサックが第二次ウィーン包囲の際、防衛軍に助力したことを記念している。バンドゥーラを抱え、チューブを垂らしたコサックの姿が珍しいのか、記念碑の前で足を止める人が多かった。

フランツ=ヨーゼフ帝の演説

コサック記念碑

 最後はS45のGersthof駅まで歩き、そこから帰路についた。



 

2021/03/08

ウィーン生活4:入国から二週間

  水曜日(3月3日)に新指導教員との面会を済ませ、入国後の一通りの懸案事項を処理し、やや気が抜けたところで風邪を引いてしまった。可能性がゼロとは言えないのだろうがおそらくコロナではなく、喉の痛み、頭痛、倦怠感、微熱などが順にやってきて3日ほど続いた。唯一持ってきていた葛根湯をとりあえず飲み、途中からドラッグストアで売っている飴とホットレモンを摂り、ようやく日曜の朝に快復した。治るまでかなり気分が参っていたが、妻にうつらなかったのがせめてもの救い。

飴とホットレモン

 今日で入国から二週間が経ったことになるが、五日間隔離していたとはいえ、この間一度もウィーン市を出ていないというのは自分の行動様式からすると異常事態である。ただ、レストランはテイクアウトのみ、商店は入店制限、ホテルは観光利用禁止という現状だと、とても出かけようという気分にはならない。日本では、これほど強く「終わってほしい」と感じることはなかった。

 以下、ここ最近済ませた用事をまとめておく。

・巨大ショッピングモールSCSで買い出し。IKEAを中心に食器など買いそろえる。レストランはもちろん、ショッピングモール内で飲食が一切できないので、寒空でテイクアウトしたバーガーキングを食べる。上で一度もウィーン市を出ていないと書いたが、厳密にはこのSCSは隣のVösendorfという自治体に属している(ので市内交通チケットに加えて2ユーロほど多めにかかる)。

SCS

Superdryも入居

・住民登録。自分の住む14区はなぜか自らの区役所を持っていないので、13区の庁舎で手続きをする。日本語記事で認証翻訳付きの戸籍が必要だという情報を仕入れ、一応用意したが、パスポートと家主の署名入りMeldezettelのみで登録が完了した。概してあっさりと完了。

13区庁舎

・Erste Bankの銀行口座開設。結局窓口のほうが確実という説も目にしたが、とりあえずオンラインでの口座開設を試したところ成功した。テレビ電話で本人確認手続きが完了し、その時点でオンラインバンキングの利用が可能になり、後日キャッシュカード・デビットカードが送られてきた。

・ウィーン市内交通の年間乗車券購入。学生割引は26歳までの年齢制限があり、残念ながら大人料金の365ユーロ。こちらも購入手続きはネットで済ませ、後日カードが家に送られてきた。カードが届くまでの間も、購入確認メールを見せれば切符を新たに買う必要はないということだ。ただ、ウィーンに来てからまだ一度も検札にあっていない。

・奨学金支給機関に出頭。

 そのほか、引き続きAmazon.de(残念ながらAmazon.atは存在しない)などで必要な家電などを購入している。唯一まだ目途が立っていないのが自宅での作業用の椅子。実際に家具屋を何件か回ったりもしているのだが決定打がなく、ネットで決めるのも怖く、備え付けの固いダイニング用の椅子で作業を続けている。