2014/11/24

2014/11/24


・読んだもの

Julien, Elise. Der Erste Weltkrieg. Darmstadt, 2014
S.25-32

ドイツには「歴史論争」と題された学部生向けの教科書のようなシリーズがあり、フィッシャー論争の現在地を探るため「第一次世界大戦」の巻を少し読んでみた。
いざ読んでみると60年代の論争最盛期についての叙述は充実しているが、現在は簡単に言えば相対主義が支配的であり、フィッシャー論争が正しいか否かなどという問いが成立する時代ではないのかと感じた。「ドイツの戦争責任の重さ」「ドイツの拡大志向」というフィッシャーのテーゼの一部は「最低限の合意」とされているものの、歴史学上の合意は未来の論難に対して不死身というわけではない。その例がChristopher Clarkの著作『夢遊病者たち』であり、開戦期の指導者たちの「夢遊病者」的な行動様式と集合的な政治の機能不全を強調して相対主義的アプローチをとる一方、セルビア、ロシア、フランス(独墺は正しく振る舞った)という新たな戦争責任のヒエラルキーを提示している。Clarkの著作がドイツでかなり売れているのはこちらに来てから実感しており、著者の立場を大まかに知れたのは良かった。

著者のElise Julienはパリとベルリンで学び、第一次世界大戦で博士号取得、リールの研究所で教えている。彼女はペロンヌの大戦博物館の顧問、及び「1914-1918オンライン」の編集委員会のメンバーである、とのこと。

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