2015/06/24
[論文メモ] Himka, John-Paul. “The Construction of Nationality in Galician Rus’: Icarian Flights in Almost All Directions,” in Ronald Grigor Suny/ Michael D. Kennedy (ed.), Intellectuals and the Articulation of the Nation. Ann Arbor, 1999
Himka, John-Paul. “The Construction of Nationality in Galician Rus’: Icarian Flights in Almost All Directions,” in Ronald Grigor Suny/ Michael D. Kennedy (ed.), Intellectuals and the Articulation of the Nation. Ann Arbor, 1999
ガリツィア・ルテニア人のネイション・ビルディングについてゲルナー、アンダーソン、ホブズボームあたりの構築主義的ナショナリズム論との関連で論じた最も代表的なもの。19世紀初頭のルテニア人の民族的アイデンティティの可能性として「ウクライナ人」「ロシア人」「ポーランド人」「ルーシン人」「ルテニア人(ポーランド共和国時代の概念で、現在のウクライナ人とベラルーシ人を含む)」が挙げられ、それぞれ政治、文化、宗教、社会の四つの側面から詳細に検討されている。その結論は、「ウクライナ人」アイデンティティの勝利は決して原初的に決定づけられてはおらず、ルテニア人にとっては全ての試みが副題にあるような「イカロスの飛翔」であったというものだ。著者は政治的側面がウクライナ人アイデンティティの形成に有利に働いたと見ており、ネイションの構築の最大の決定要素は畢竟政治であると述べている。
憶測も含まれた論争的なもので、非常に刺激的だった。ネイション形成の主体として基本的にインテリしか想定していないところが一連の近代論からのナショナリズム研究の一つっぽく見えるが、著者は1848年における農民についてモノグラフを書いているし、ルテニア人のネイション・ビルディングには近代論モデルが適合するということのようにも思える。
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