2014/10/18

2014/10/18


・読んでいるもの

Kerstin S. Jobst, Geschichte der Ukraine. Stuttgart, 2010

レクラム文庫のウクライナの通史。だんだんかなりの好著だと分かってきたので一段落ずつメモをとりながらじっくり読んでいる。

①ガリツィアのRussophilenはウクライナのナショナル・ヒストリーからは裏切り者としての烙印を押されているが、その実ウクライナの民族運動の土台をつくったのは彼らだった。19世紀の前半、彼らはルテニア人に「ロシア的な起源」を広めることで、とくに宗教におけるポーランド人との違いを教えた。確かに、ガリツィアのルテニア人農民が理解できる参照軸は日常接する宗教しかないだろうな。そしてルソフィル→アンチ・ローマカトリック→ウクライノフィルと展開してゆく。

②1895/96年のパンフレットで初めてウクライナの独立を唱えた(らしい)バシンスキーという人物について。彼は社会主義者でありマルクス主義の解釈のもとウクライナの独立を唱えた、当然の帰結としてウクライナ国家も世界国家に溶解してゆく運命だった。また、彼はガリツィア・ルテニア人の起源をキエフ・ルーシではなく1848年革命時のガリツィア総督シュタディオン伯が強欲なポーランド人に対抗させるために産み出したものだとした(この皮肉は当時広く流布していたらしい)。彼の教義は影響力をもたなかったが、のちのナショナル・ヒストリーでは独立を最初に唱えた人物という部分だけが取り出され、民族主義の輝かしい先駆者とされた。


・読んだもの

Potul’nyts’kyi, Volodymyr. “Galician Identity in Ukrainian Historical and Political Thought,” in Christopher Hann and Paul Robert Magocsi (ed.), Galicia : A Multicultured Land. Toronto/Baffalo/London, 2005

ちょっと図式的にすぎる気もしたが。とりあえずウクライナ主義におけるガリツィアの位置づけが東ウクライナ出身かガリツィア内部からの視線か、あるいはどんな政治的立場化かによっていかに異なっていたかを示すもの。

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