ミュンヘンの心臓MarienplatzをRindmarkt方面に下りさらに進むと、特徴的な外観のユダヤ博物館が建っている。ザールブリュッケンの建築事務所Wandel, Hoefer und Lorchの手によるもので、Wikipediaを見ると彼らは主にユダヤ関連の施設に携わっているようだ。国際的に名を知られるきっかけになったというドレスデンのシナゴーグは、12月に訪れたとき実際に見たことがある。
企画展が「第一次世界大戦時のユダヤ人」ということで期待して入ったのだが、展示の対象になっているのがドイツ、オーストリア側のユダヤ人だけだったのが残念。愛国心、実利的協力、反戦などユダヤ人内部での戦争に対する態度の多様性が見られたのは良かった。
言葉通りの意味での収穫となったのが反戦的ユダヤ人作家の手による詩の数々。「ご自由にお取りください」ということで、5,6枚の詩を持ち帰ってきた。古い紙質、ヤケやタイプライターに独特な滲みの再現など、丁寧な作りが100年前の作者の声を呼び起こす。
せっかくなので一篇訳した。日本でも有名なオーストリア=ハンガリーの作家、カール・クラウス(1874-1936)のもの。
死にゆく兵士
大尉、軍事裁判所を呼んで来い!
ぼくが死ぬのは皇帝のためじゃない!
大尉、おまえは皇帝のならず者だ!
ぼくは死んでも、敬礼はしない!
ぼくがぼくとして生きているとき、
ぼくのもとに皇帝の玉座はある、
そしてやつの命令は嘲るだけさ!
ぼくの村はどこ?そこで息子が遊んでるんだ。
ぼくがぼくのなかに眠ってゆくとき、
ぼくの最後の軍事郵便が届く。
呼んでる、呼んでる、呼んでる、呼んでる!
ああ、ぼくの愛はなんて深いんだ!
大尉、おまえは頭がどうかしてる!
ぼくをここに連れてくるなんて。
炎のなかでぼくの心は灰になった。
ぼくが死ぬのは祖国のためじゃない!
おまえたち、ぼくに何もさせるな!何もさせるな!
その死が鎖を壊すのを見るんだ!
そして死を軍事裁判所に召喚しろ!
ぼくは死ぬ、でも皇帝のためには死なない!
カール・クラウス、1917
原文はhttp://gutenberg.spiegel.de/buch/karl-kraus-gedichte-4694/2。
他の詩の作者は、
リオン・フォイヒトヴァンガー(1884-1958) 代表作『ユダヤ人ジュース』
エルンスト・トラー(1893-1939) 代表作『群衆人間』『機械破壊者』 バイエルン革命で労農兵レーテ議長を務めた。
クルト・トゥホルスキー(1890-1935) 代表作『グリプスホルム城』
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